インドラの網に繋がれた宝石

 桐野夏生の「インドラネット」を読了した。著者は直木賞作家で、ロマンス小説、ジュニア小説の分野で作品を書き始めた後、「顔に降りかかる雨」で1993年、第39回江戸川乱歩賞を受賞し、ミステリー作家として本格デビューしている。本書では、何の取柄もなく、劣等感に苛まれて生きる男が、かつて経験した唯一の華やぎの思い出である美貌の友人の行方を捜すためにカンボジアで彷徨する姿が描かれている。
 本書の主人公で二十五歳の八目晃は、IT関連会社の子会社の契約社員であり、自分を「どこにでもいそうな平凡な顔で、運動神経は鈍く、勉強もあまり得意ではない」と評価している。八目は