龍玉を抱く資格

 浅田次郎の「兵諌」を読了した。著者は直木賞作家であるが、自衛隊入隊や一時期企業舎弟をしていた等、ユニークな経歴の持ち主である。作風は広く、極道小説、時代小説、中国歴史小説、現代小説など多岐に渡っており、「小説の大衆食堂」を自称している。本書は、「蒼穹の昴」、「珍妃の井戸」、「中原の虹」、「マンチュリアン・リポート」、「天子蒙塵」に続く、著者の中国歴史小説シリーズの第六部である。本書は、中国における第二次国共合作の契機となった西安事件を伝聞形式で描いたものであり、軍事法廷ミステリーでもある。
 本書の舞台は、日中戦争の発端となった盧溝橋事件(1937年7