夫の遺言

 空は抜けるように青く空気は澄み渡っていて風が冷たい。
でも、陽射しのぬくもりがもわもわと一日中部屋の中
を温めていた。

 そんな秋の一日、夫は何やらパソコンに向かって
書いていた。

ほどなく、カシャカシャとプリンターが作動する音が
聞こえてきた。
日がなパソコンの前に座って何か書き物をしている
夫なので、取り立てて気にも留めないでいた。

 「これを読んでおいてくれないか!」と
彼はB5判に印刷したものを、私に渡してくれた。
「えっ、これは何?」と、私は訝し気に覗いた。
「うん、息子夫婦に遺言書を書いて置いた。
いつ死んでもいいようにな…もはや早過