憧話作家・小原麻由美さんの教室で作った話……
幻の林檎
あの聖夜は若く、兎も若かった。が、夜の空気は甘いのに、兎の気分は苦かった。
林檎の爆弾は、爆発しなかった。兎が学校に仕掛けたまっ赤な林檎の形をした爆弾は、爆発しなかった。十四歳の兎は、その頃は何でもできると信じて疑わなかった。
“気にいらない場所は林檎の爆弾で吹き飛ばせばいい”
まわりから天才、秀才と呼ばれていた兎は、魔法の杖を持っているかのように、爆弾でも武器でも何でも作ることができた。
ところが林檎の爆弾は、爆発しなかった。学校ではクリスマスの会が開かれていた。兎も呼ばれていたが、学