名古屋弁物語 新宿純情

 昭和五十二年の秋、新宿歌舞伎町の居酒屋のバイトが決まった。夏休みに地元名古屋に帰って羽根をのばしてきて小遣いを使い果たしてきた。そこで大学の授業が終わってから夕方から居酒屋で働くようになった。新宿駅東口を出てコマ劇場に向かうと繁華街の入口の左側の高いビルの7階に店がある。同じような男子大学生が五、六人働いている。なんと東大生もいる。そろいのエプロンをして、客の注文を聞き、料理や酒を運ぶという単純労働だ。早い時間には、ビルの下の信号の前でビラまきだ。歩行者の動きにあわせて相手の手にチラシを握らせるには、タイミングをはかる必要がある。

 バイトも慣れた