輝ける山

 澤田瞳子の「輝山」を読了した。著者は若手の歴史、時代小説作家で、大学時代に奈良仏教史、正倉院文書を専攻し、「孤鷹の天」で第17回中山義秀文学賞を受賞してデビューしいる。本書は、江戸時代後期の石見国大森銀山で働く人々を描いた群像劇である。
 春雷:本書の語り手は、石見国大森代官所の中間の金吾である。金吾はかつての上司で、現在は尾花沢代官所江戸屋敷に勤めている小出儀十郎から、代官の岩田鍬三郎の身辺を探れとの密命を受け、大森代官所に赴任する鍬三郎に従って江戸から石見国に赴いている。鍬三郎は飄々とした性格であり、役宅からほとんど出ることがなく、代官所の実務は元