第一章 再会
(コロン)
ラインの着信音が鳴った。
繭子は読みさしの本を伏せると、テーブルの上のスマホに手を伸ばした。
スマホに飛び込んで来たのは、猫が赤いハートのマークを吹き出している乙女チックな動くスタンプである。
誰からかと思ったら瑤子からであった。
(ラインに登録したら自動的に繋がったの。久し振りー。お元気?)
懐かしい名前である。
瑤子とラインが繋がった事で、繭子の脳裏には一瞬にして紺の制服を着たキャンバス生活の日々が蘇った。
それは燦々と陽光が降り注ぐ校庭のベンチで、空の雲の変化を眺めながら、一人前に人生を語り、恋に
連載:金木犀の香る頃に 改訂版