日本植物学の父

 朝井まかての「ボタニカ」を読了した。著者は直木賞作家であり、時代小説、歴史小説をテリトリーとしている。本書は、日本植物学の父とも言われる、牧野富太郎の生涯を描いた評伝小説である。
 本書の主人公の牧野富太郎は、文久二年に土佐国佐川村(現在の高知県高岡郡佐川町)で生まれる。実家は岸屋という屋号の造り酒屋兼商家で、村一番の富豪である。しかし、彼の両親は彼が幼い時に結核で亡くなっており、彼は祖父の後妻の浪に育てられる。牧野家にはもう一人、やはり幼くして両親を失った従妹の猶も育てられていた。富太郎は子供時代、野山を毎日駆け回って遊んでいたが、特に植物に興味を示