月の色朧に淡い花透かす



 ふるさとのごと戻り来し花の下  佐土井智津子

 杣道に踏み入り花に逍遥す  大久保白村

 しだるるは風に遊べる花心  稲畑汀子

 宵闇にいとも艶やか花の色  アロマ

 参道の凹みふくらみ花の風  吉弘恭子

 天地有情さくらの花の散る限り  大橋敦子

 この頃や開花予報のかまびすし  出口賀律子

 花どきの吉野の和紙の白さかな  岩上とし子

 池の面に枝差し伸べて花開く  アロマ

 青銅の屋根ぬれ色に花明り  尾高せつ子

 花散らす岸に小舟を寄せにけり  小山香月

 列島をくねらせ花の予想かな  廣井良介