第十二章 画家とモデル
瑤子はぼんやり外の雪景色を眺めていた。
二月に入ると例年にない程強い寒気団が日本の上空に流れ込んだ。
一日に何度も天気情報がテレビに流れる。
(今日も西高東低の強い冬型の気圧配置が続き、東京都区内でも二十センチの積雪が予想されます。交通機関の乱れや道路の凍結に十分ご注意ください)
マンションに隣接しているオートクチュール『ライラック』もさすがに客が来ない。
店員は二人いるが出勤が大変だったろう。
「あなたたち、今日はこんなんだから早めに帰っていいよ」
「大丈夫ですよ。ここは暖かいし、家に居ても退屈で
連載:金木犀の香る頃に 改訂版