第十一章 親、子、孫
息子の剛志からラインが届いた。
「おめでとう御座います。あす遥と帰ります」
「おめでとう。待ってるからね」
夫の純一には、子供たちの進路を相談しても、お前が決めろ、好きなようにしろ、の一点張りで全て繭子任せだった。
それは、純一自身が夫と言うより婿養子のような立場だと思い込んでいたからでもあるが、繭子にしてみれば責任逃れをしているようにしか思えず、甚だ不満だったのである。
それでも、子供たちは、繭子が何も強制しなかったにも拘わらず、見事に堅実な道を歩んでいる。
剛志は東都大学の電子工学部の四年生、下の遥も同
連載:金木犀の香る頃に 改訂版