富樫倫太郎 の 堂島物語(5)漆黒篇

★3.5 元文2年(1737年)万吉8歳~寛保4年(1744年)万吉15歳。

物語は突然、かつて山城屋で丁稚頭であった百助一家の話となる。百助は〈つめかへし〉で借金を返せず、同じ奉公人のお新と駆落ちしていた(青雲篇)。百助は米の行商人となっていたが酒に酔って堀に落ち死んだ。長男の万吉8歳、妹のお陸は生まれたばかりである。

万吉は12歳から野菜の振り売りを引き継ぎ、家計を背負っている。金を貯め、父親の夢であった米の仲買人になることを目指していた。毎日、青物商いの後、堂島や現銀見世(つめかへしの名を変えたもの)に顔を出し、米商いを独力で学んでいる。