連載:金木犀の香る頃に 改訂版

金木犀の香る頃に 蛙川諄一  第14回

第十四章 時には父と娘のように

 クラブ『夕顔』にもひたひたと不況の波が押し寄せている。

 ここを利用する客たちの多くは社用族である。
 自腹を痛めないで接待費で落とせる間は、接待された方が又客を連れて来ると言う好循環が続いていたが、今は何処も経費節減で客は減る一方である。

 自腹を切ってでも通って来る客はいるが、彼らはそれぞれお目当てのホステスがいる部課長か役員クラスの客に限られてきている。

 そんな中で谷村千里の心境にも少しずつ変化が生まれていた。

 純一の本妻繭子が訪ねて来た時にはうろたえたが、彼女の思いがけない思い遣りにも驚いた。
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