第十五章 奇禍
爽風会の展覧会からひと月が過ぎた。
今年も異常気象なのか、梅雨らしい季節を通り越していきなり夏日が続いている。
(今度はヌードを描かせて下さいね)
宰光の言葉は繭子の脳裏に焼き付いたままである。
瑤子の話からすれば、宰光は繭子のヌードは描いたとしてもそれ以上の事はない筈である。
それでも、長い間夫にも見せた事のない裸身を宰光の前に曝すと言う行為は想像しただけでも体が熱くなる。
そんな事を考えているとラインの着信音が鳴った。
宰光からである。
「お元気ですか。実はちょっと心配な事が出来て瑤子には内緒でライン
連載:金木犀の香る頃に 改訂版