「太一、ゴリ番やぞ」
父の声が、寝ている太一の頭上で響いた。
「はよう、起きろ」
父の叱責するような声音に、太一は慌てて飛び起きた。すぐに起きないと、何が飛んでくるかわからない。太一の父は、口より先に手がでる。
ゴリの番はずっと祖父の役目だった。
その祖父が百歳まであと二年を残して、六月にぽっくりと大往生してしまった。
太一は、祖父が大好きだった。祖父の昔話は、大変おもしろくて、いつも胸をどきどきさせながら聞いた。
祖父の忌明けが終わると、父は漁を再開した。太一は祖父のしていたゴリの番をすることになったのである。
夏休みは、朝の六時半