連載:金木犀の香る頃に 改訂版

金木犀の香る頃に 蛙川諄一 第22回 最終回

 第二十二章 親たちを越えて

 あの個展が終わり、もう二年余り過ぎた。

 宰光からは繭子と父の元には、相変わらず肉筆の絵が描かれた年賀状だけは届いているが、瑤子の居ない今、繭子も訪問する理由もないまま時間が経過していた。
 そんなある日、久し振りに宰光から封書が届いた。
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 「ご無沙汰致して居りますが、お元気でお過ごしの事と存じます。実は娘の響子が、毎朝新聞社主催の日本音楽コンクールの作曲部門で一位入賞致しまして、十月二十日に記念演奏会を開く事になりました。
 つきましては繭子さまご夫妻とお父君ご夫