ある直木賞作家の独白

 逢坂剛の「ご機嫌剛爺-人生は、面白く楽しく!-」を読了した。著者はミステリー畑出身の直木賞作家でるが、「重蔵始末」シリーズや「鬼平」シリーズ等の時代小説も幅広く手掛けている。本書は、八十歳を目前にした著者の、これまでの人生の「語り下ろし」である。本書はエッセイ風ではあるが、著者が「書き下ろし」ではなく、「語り下ろし」と称していることが示す通り、著者がインタビューで語った内容を、女性編集者が文章化したものである。
 著者の父親が2015年に104歳で亡くなった、池上正太郎の作品の挿画を担当した、挿絵画家の中一弥氏であり、同氏が著者の「重蔵始末」シリーズの