日本初の野生児

 辻堂ゆめの「トリカゴ」を読了した。著者はミステリー作家で、東京大学在学中にの2014年に、「夢のトビラは泉の中に」で第13回『このミステリーがすごい!』大賞優秀賞を受賞し、2015年に同書を改題した「いなくなった私へ」で作家デビューしている。本書は、殺人未遂事件の捜査に関わったことから、無戸籍者のコミュニティの存在を知った女性刑事の苦悩を描いた、警察小説である。なお、本書は2022年の第24回大藪春彦賞受賞作である。
 里穂子が六歳の1996年5月、後に「鳥籠事件」と呼ばれることになる事件が発覚する。母親の名取宏子の育児放棄により痩せ衰えた、三歳と一歳