蟻の巣の様な地下都市

 フランシス・ハーディングの「ガラスの顔」を読了した。著者は英国在住のファンタジー作家である。本書は、生まれつき表情をもたず、面(おも)と呼ばれるつくられた表情をまとう人々が暮らす地下世界で、都市全体を揺るがす陰謀に巻き込まれた少女の奮闘を描いた、ミステリー風味の冒険ファンタジーである。
 物語の舞台は、迷路のように入り組んだ、架空の地下都市カヴェルナであるが、その都市に住む人々は生まれつき表情を持たず、面(おも)と呼ばれる作られた表情を身につけて暮らしている。面は面細工師(フェイススミス)によりデザインされ、訓練により身につけるのだが、金持ちは二百や三