由比正雪の正体

 真保裕一の「真・慶安太平記」を再読した。著者は江戸川乱歩賞出身のミステリー作家であるが、最近は時代小説や経済小説も手掛けている。本書は、由比正雪の乱として知られる「慶安の変」を、著者なりの新解釈で描いた歴史小説である。
 物語は、慶安四年(1651年)七月、かねてから内偵していた由比正雪が姿を消したことを知った知恵伊豆こと松平伊豆守信綱が、奉行所に駆け付けようとする場面から始まる。しかしその時、信綱は由比正雪の正体を知らなかった。小説の正体を知っているのは、保科正之とその家来の極一部のみであった。
 本書の主人公は、慶安の変の首謀者である由比正雪ではな