鳥の歌
思い出したように友はチェロのケースを開き
娘の好きだった鳥の歌をゆっくり弾き始めた
彼女が春にとけて早五年が過ぎた
いつでも一緒に居ると友は言ってた
彼の弾く鳥の歌を少し外れてると笑いながら
幸せそうに遠くを眺め静かに聴いていると
どんなに呼んでもどんなに望んでも
抱きしめられないこの思いを
春の夕暮れの風に流し歌で贈る
心からお前を愛しているとつぶやく様に
娘を忘れるために
崩れそうな自分を支えるために
彼はただひたすら働き続けた
そして今友は
お前と出会えて幸せだったと
少しだけ静かに思える様になっ