見返り美人

 梶よう子の「吾妻おもかげ」を読了した。著者は時代小説を主なテリトリーとする作家である。本書は、浮世絵の祖と称される菱川師宣の生涯を描いた時代小説である。
 菱川吉兵衛は吉原できれいな遊びをすることで知られており、どこかのお大尽の息子と考えられていたが、実際は安房国保田の縫箔師の息子だった。その吉兵衛が贔屓にしている格子女郎の小紫は情の強い女であり、今でも彼に心を許していない。その小紫を挟み、吉兵衛は揚屋の丸川で、顔馴染みの商家の主人の鱗形屋三左衛門と宴席を共にしている。丸川の女将のおさわが挨拶に来た時、桐屋の若い安女郎のさくらが酔っ払っておさわに、最近