連載:花②

「何処にでもある花」

「鉄子さん、これもらってくれる?」
植木鉢を手にしてご近所さんが言う。
「何処にでもある花なのよ。子供の頃、蜜を吸って遊んだりした」
「ああ、オレンジ色の花が咲く?」
「そうそう。増え過ぎて困ってるのよ。もらってくれたら助かるわ」

この方には私がホームに花を植えている事を話してあり、先日スズランを分けていただいた。ご主人が介護施設で亡くなったばかりだ。

特別派手な花より、子供の頃の思い出があるような何処にでもある花がいい。

例の婆様は今日も掃除をしてくれたし、嬉しい事が重なる。

婆様は冗談が好きだ。入居したての頃、生まれた年を聞いた事がある。