読売文芸 5月31日
俳句 大川畑光詳 選
梅は実に門柱傾(かし)ぐ屋敷跡 薩摩川内 木戸 凛
(評)季語は「梅の実」で夏。家屋は撤去されているものの残された門柱は傾き、庭の植栽も荒れ果てたままだ。葉の茂った梅は主なくとも青々と身をつけている。住人の営みの気配が自然の循環の中で次第に消されていく哀れを感じる。
寅さんのやって来さうな五月晴れ 鹿児島 川端清一郎
惜しまれつ河鹿の聲の遠くなり 千葉 小野原俊明
大鯉の陽を食(は)む水面夏初め 姶良 上橋 守
遅れ来るバスの急がず合歓(ねむ)の花
鹿