連載:蕎麦の食べある記

松本の名店「三城」 ―メニューのない御そば処―

今回の信濃路の旅は、松本の蕎麦屋へ行くと聞いたので、楽しみにしていた。
元々は麹町にあった蕎麦屋だが、15年ほど前に女将の故郷である松本へ移転したそうだ。
麹町の店は、各界の著名人に愛され、寛げる店として繁盛していたらしい。
他には、蕎麦を待つ間に酒が飲めるという程度しか、予備知識はなかった。

店は松本城大手門にあるが、Ben君の運転で来たので、よく分からない。
城を思わせる真っ白な外壁に、紺地の短暖簾に白抜きで「三城」(さんじろ)と、あるだけである。
外からは見えないが、暖簾をくぐって右側にある引き戸の脇に、「御そば処 三城」と表札があった。
徐々に