蝉時雨 耳にさわさわ心地よく  


 
 新車来てまづ八月の風を切る  小澤克己
 
 越後路の八月すすき真白なり  阿部ひろし

 八月十五日母の炒めし藷の蔓  宇利丞示

 八月の少年梨の香りせり  小黒カツ

 耳鳴りはあの八月の蝉しぐれ  中田みなみ

 八月の横須賀海軍カレーかな  平田紀美子

 浦上の八月の空眩しかり  山口キミコ

 八月某日ダイソーのゴム草履  辻美奈子

 八月の風吹く富士となりにけり  宮川みね子
 
 八月の氷河渡りし日も遠く  大磯幸子  
 
 八月の記憶たしかに不たしかに  飯塚ゑ子

 八月を笹子の鳴ける原生林  辻恵美