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「帰らぬ人」

駅チカの飲み屋街に差し掛かった。店の外に設えた席はほぼ満席で、ビール片手に笑顔がこぼれる。

丁度信号で止まったので、何度も振り返ってその光景を眺めた。気温は快適。夏の夜の生暖かい空気の中に風が心地よく流れていた。

家を出たのは夕方6時過ぎていたが、夏至が過ぎたばかりで十分明るい。

若い娘の姿も多く、浮かれた高い声も聞こえた。コロナなど存在しなかった頃と何一つ変わりのない週末の金曜日がそこにあった。

私は昼間職場にいた。同僚が言った、
「アベさんがウタレタよ」
アベさん?ウタレタ?最初は意味が分からなかった。

「心肺停止」という言葉が表現するもの