フー・ダン・イット

 芦辺拓の「名探偵は誰だ」を読了した。著者はいわゆる新本格派のミステリー作家で、ミステリーに対する造詣の深さ、博覧強記で知られる。本書は、少し捻ったシチュエーションによる、変則フーダニットの連作短編集である。
 「犯人でないのは誰だ」:私は無料の招待券を貰い、深い山の中にある河畔亭ホテルに休養にやってきた。私は最近、入院中の街金業者の伯父の大坪徳馬から、彼の会社を継げと言われていた。散歩に出た私は山道で迷い、やっとの思いでホテルの裏側に辿り着く。そして、謎の二人連れが「大坪金融の再建」、「とにかく早急に」、「この三人で」、「殺さねば」と話している言葉が