政五郎とおでこの登場

 宮部みゆきの「子宝船-きたきた捕物帖 2-」を再読した。著者は直木賞作家で、ミステリー、時代小説、ファンタジー等、レパートリーの広い作家である。本書は、元岡っ引きの手下で文庫の振り売りの北一と、武家出身らしいが風呂屋の釜焚きという謎の人物の喜多次という、ともに身寄りのない二人の若者を主人公とした捕物帳の中篇集である。なお、「おでこの中身」と「人魚の毒」は一続きの物語である。
 「子宝船」:北一は、亡くなった千吉親分から引き継いだ文庫(暦本や戯作本を入れる厚紙製の箱)売りで独立し、欅屋敷の東の猿江御材木蔵の西側の畑の中に文庫制作の作業場を持つ。文庫作り