連載:シニア

「三日月」

三日月は冬にこそ相応しい。

職場を出ると辺りは真っ暗、空には三日月が光る。たった一日か二日で膨らんでいる。


「ウーッ!」
2歳の孫が窓に三日月を見つける。まだ暗闇には至らず、薄暗い程度だ。そこに僅かに見える細い三日月が架かっている。

確かにお兄ちゃんと三日月を眺めた。それを見ていたのだろう。2歳の眼はしっかり三日月を捕らえていた。 


孫と過ごした一週間、たった一週間が娘一家や私自身を変えた以上に、ホームの婆様は「落ちて」いた。

体調を崩し、たった二日寝ただけで、立つ事が難しくなり、言葉は出て来ず、食欲もなくなった。