時代小説

「宵待ち銀次・江戸草子」
             なからい悠
 
(かたりのお蝶)
江戸時代も後期、徳川幕府十一代将軍・家斉の時代の頃のことである。
天保二年八月、場所は神田佐久間町この辺りは商家が多く、江戸市中の中でも商いが栄えて居るところで知られて居た
その界隈で近頃のことだが
奇妙な事件が相次いで起きて居たのである。大通りに面した老舗のお店(おたな)から、佐久間町の番屋へ届け出があったのは、めっぽう暑い日の昼を過ぎた頃合いのことだった。呉服や羽織物を扱う尾張屋の番頭が丁稚を伴に銀次を名指しで
「手前どもの主人が、銀次親分さんに是非