時代小説


「宵待ち銀次・江戸草子」
             なからい悠
 
(流れ星)
九月も終わり頃になり、江戸の町はめっきり秋らしく寒くなって来た。
銀次はひとり呟く様に 
「まだ、綿入れは早いしな・・」
こんな晩は早く戻って熱燗が一番だ、と、思いながら歩いて居ると、向こうから若い男が息を切った様に走って来る。
様子を見ていると、どうやら追われて居るらしい。その内、浪人者が二人現れた。若い男を挟む様にして、ひとりが刀を抜いた。
このままでは若い男が間違い無く切られると思った瞬間に銀次の投げ釘が風にうなり、投げ釘は浪人者の手首に深く刺さっ