ジャパンブルーの江戸の空

 梶よう子の「広重ぶるう」を読了した。著者は時代小説を主なテリトリーとする作家である。本書は、風景画、名所絵を得意とする代表的な浮世絵師である歌川広重の生涯を描いた時代小説である。
 歌川広重は本名が安藤重右衛門であり、江戸八代洲河岸定火消屋敷の同心、安藤源右衛門の子として寛政九年(1797年)に誕生している。源右衛門は入り婿であり、養父の安藤十右衛門との間に確執があった。文化六年(1809年)二月、母が亡くなり、父親が隠居したために重右衛門は数え十三歳で定火消同心職を継ぐが、同年十二月に父親もなくなってしまう。十右衛門は後添えを貰い、嫡子を儲けると言