澤田瞳子の「吼えろ道真－大宰府の詩－」を読了した。著者は直木賞作家で、歴史、時代小説作家をテリトリーとしている。大学時代に奈良仏教史、正倉院文書を専攻し、「孤鷹の天」で第17回中山義秀文学賞を受賞して作家デビューしいる。本書は「泣くな道真」の続編で、右大臣から大宰府に左遷された菅原道真の姿をコミカルに描いた時代小説である。なお、本書では前作の「うたたね殿」こと大宰少典龍野保積に代わり、大宰大弐小野葛絃の甥で、大宰小弐の小野葛根が狂言回しになっている。
　道真が大宰府に左遷されてから五か月後、昌泰から延喜への改元が行われる。改元の布告が出される前日、小