戦国に生きる女性達

 木下昌輝の「戦国十二刻-女人阿修羅-」を読了した。著者は歴史・時代小説作家で、第92回オール讀物新人賞を受賞して作家デビューしている。本書は、長久手の戦い以下、時代の転機となった事件に至る24時間と、時代に翻弄される女性達の数奇な運命を描いた歴史小説の短編集である。
 「戦腹」:天正十二年(1584年)四月八日未の刻、妊娠中にも関わらず、小牧山で戦評定に出席していた徳川家康の側室の阿茶は、織田信雄の家臣の土方雄久に非難され、退席を余儀なくされる。阿茶は武田氏家臣の家に生まれ、今川家家臣の家に嫁いで子供を産み、武田氏滅亡後に家康の側室になった聡明な人物