連載:映画

「隣の男性が泣いている:『オットーという男』」

隣の席の男性が鼻を啜る音が聞こえた。花粉症か。うるさいナ。まさか、泣いている?そうだ、泣いているのだ。号泣だ。

館内が暗くなる前に見た限りでは、一人で来ている事はわかった。見回すと一人が多いとも思った。

エンドロールになると帰って行く人が出始めたが、私は明るくなるのを待った。暗闇で階段を踏み外したら大変だ。最後の最後に驚く一文が映し出された。生きるのが辛いあなたへ、いのちの電話。とって付けたような例のあれ。これがこの映画で一番驚いたことだ。

確かに主人公は死のうとしていた。何度も何度も。一番印象的だったのは駅のホーム。自分が線路に飛び込