闇バージョンのこっくりさん

 貴志祐介の「秋雨物語」を読了した。著者はホラー、ミステリー、SFをテリトリーとする作家であり、1996年に「ISOLA」でに日本ホラー小説大賞第3回長編賞佳作を受賞し、同作を改題した「十三番目の人格ISOLA」で、作家デビューしている。本書は、ノンジャンルのホラーの短編集である。
 「餓鬼の田」:社員旅行で立山黒部アルペンルートの弥陀ヶ原に泊まって宴会をした翌早朝、喉が渇いて目が覚めた谷口美晴は、窓の外の遊歩道を同じ課の青田好一が歩いているのを見掛ける。青田は三十三歳で独身であり、二十五歳で彼に多少の好意を感じていたの美晴は、彼を追って遊歩道を歩き始