天の十字架

 柄刀一の「密室の神話(ミサロジー)」を読了した。著者は本格派のミステリー作家である。本書は、北海道の美術学校のアトリエで起こった、四重の密室殺人事件を描いたノンシリーズのミステリーである。
 物語の舞台は北海道の札幌市と旭川市の中間にある架空の裏幌市である。裏幌市九段町駐在所に「裏幌美術アカデミーの別棟の中に、天の十字架に架けられた遺体がある。対処されたい」との通報があり、連続放火事件の専従であった裏幌西警察署刑事課の戸賀甚平巡査部長が確認に派遣される。同別棟は町外れの石狩川の河原に面して建てられた、学生達のサークル活動に使われている古いモルタル造り