蜃気楼船が沖行く像結ぶ



 石ころの浮き足立ちて別れ霜  檜紀代

 桶底の仕舞ひ酸莖や別れ霜  中原道夫

 早暁の東京発ちぬ別れ霜 稲畑汀子

 別れ霜駅へと急ぐ女学生 大内幸子

 別れ霜体内時計の螺子を巻く 寺田すず江

 箒目の流れのままに別れ霜  能村研三

 「別れ霜」という小説杉本苑子  アロマ

 九体寺の味噌は甘かり別れ霜  長谷川かな女 花寂び

 春潮のひかりに包む握り飯  服部早苗

 春潮といへば必ず門司を思ふ   高浜虚子

 あの辺り佐渡があるてふ春の潮  長沼紫紅

 落日の色呑み込めり春の潮