連載:何が何でもナンセンス

伝承の末に



目の悪い男がいた。
悪いと言っても目玉が他人の家に放火するとか、誰かの後をつけて風呂場を覗くとかと言った悪さをするわけではない。
ただ視力が低下し、景色や文字の輪郭がぼやけ、物事がぼんやりとしか見えないといった程度の悪さだ。


「なんか最近見えづらくなったな~。いっぺん眼医者にでも見てもらおうか?」
男は医者が好きではなかったが、ものがはっきり見えないというのは何かと不便だ。
男はしぶしぶ眼医者に行った。

「どうされましたか?」
「眼医者のくせに、見てわかりませんか?」
「はい。眼医者の場合、どんな名医でも見ただけでは症