差し交す若葉の中を登山かな



 海胆割って利尻の初夏をすすりけり  柴田良二

 利尻にて冷えた雲丹の軍艦を  アロマ

 サハリンのかすかに見えて海胆啜る  藤村美津子

 海胆割りてしづしづ入れる銀の匙 北城美佐

 ハーモニカ雲にも聞かせ春惜しむ  山口速

 春惜しむ旧居留地の角に立ち  朝妻力
 
 カクテルのうすももいろに春惜しむ  小柳千美子

 武蔵野を統べし社に春惜む  稲畑汀子

 春惜しむちぎつて食べるフランスパン 上村葉子

 春惜しむ浅草六区フランス座 三宅文子

 さらさらと陽と砂こぼし荒布干す 荒井千佐代