天皇の午餐会

 朝井まかての「朝星夜星」を読了した。著者は直木賞作家であり、時代小説、歴史小説をテリトリーとしている。本書は、大阪初の洋式ホテルである自由亭ホテルを開業した草野丈吉と妻ゆきの半生を、妻の視点で描いた評伝小説である。
 ゆきは肥後の貧乏百姓の家に生まれ、十二歳の春に長崎丸山町の傾城屋引田屋に奉公に出ている。ゆきは骨太であったため、祖母の反対により女郎ではなく、女中として奉公したが、齢とともに背丈も伸びて五尺半の大女になっていた。そのゆきが二十五歳の時に縁談が持ち上がるが、あいては一つ年下の草野丈吉という、長崎生まれの料理人であった。彼は長崎の伊良林の貧