読売俳壇 5月16日(火曜)
俳句 大川畑光詳 選
柿若葉濡らして子規の従軍記 霧島 秋野 三歩
(評)正岡子規は二十八歳の時、新聞記者として日清戦争に三十三日間従軍。その無理が祟って五月十七日、帰国の船上で大喀血。翌日馬関(下関)に着いた時、「馬関まで帰りて若葉めづらしや」と詠んだ。揚句の明るく濡れた「柿若葉」は、司馬遼太郎が小説「坂の上の雲」で描いたような子規の快活で、激烈な青春や無類の柿好みを重ねての配合であろう。
武家通り玉石垣へ風薫る 霧島 薗 孝湖
野に還る人家の名残棕櫚の花 鹿児島 中村