稲盛和夫「稲盛和夫の実学 経営と会計」

 本書はバブル崩壊で日本経済が低迷し、企業不祥事が頻発している状況に憤りを感じた著者が経営者はかくあらねばならないという思いから記した著作である。裸一貫から京セラを世界的企業に育て上げた著者にとって会計は文字通り死活問題だった。経理部の算出した決算数値を鵜呑みにすることはできず、納得するまで経理部長と問答を繰り返したそうだ。この辺は、製品の開発に一切の妥協を許さない技術者の面目躍如というところか。それ故、著者の会計学は高度な会計論など全く眼中になく、非常にシンプルだ。

 著者の実践的基本原則のいくつかを挙げてみると、キャッシュベースで経営する、一対