連載:戯れナンセンス

はがゆい欲望



「ああ、いっそのこと仙人になりたい。」
男は丘の上から街並みを見下ろしながら、そんな思いに駆られていた。

信頼していた人に裏切られ、家族にも見捨てられ、もはやこの世では何一つ実現したいと思う欲望もない。
彼に残された欲はただ一つ、それは人間を超えた存在としての仙人になることだった。
「どんな修業を積めば仙人になれるのか?」
彼は山の中腹にある古びた寺を訪ねた。
  三照山智仙院龍門寺
こじんまりとした山門の割には立派な扁額が上がっていた。

「こんにちわ~。」
ありったけの大きな声で彼は叫んだ。
その声は挨拶としては異例