『万葉集』を訓(よ)む(その千九百七十七)

 今回は、一六一三番歌を訓む。題詞に「賀茂女王歌一首 [長屋王之女母曰阿倍朝臣也]」とあり、本歌は、「賀茂女王(かものおほきみ)の歌(うた)」である。割注に「長屋王(ながやのおほきみ)の女(むすめ)、母(はは)を阿倍朝臣(あへのあそみ)と曰(い)ふ」とある。賀茂女王は、五五六・五六五番歌の作者として、既出で、それらの歌から、大伴三依と恋愛関係があり、その後別れたことが推測される。なお、本歌には「右(みぎ)の歌(うた)は、或(ある)は云(い)はく椋橋部女王(くらはしべおほきみ)の作(さく)、或(ある)は云(い)はく、笠縫女王(かさぬいのおほきみ)の作(さく