『万葉集』を訓(よ)む(その千九百七十九)

 今回は、一六一五番歌を訓む。題詞に「天皇賜報和御歌一首」とあり、本歌は、「天皇(すめらみこと)の報和(こた)へ賜(たま)ふ御歌(みうた)」である。ここの「天皇(すめらみこと)」は、聖武天皇。 
 写本の異同は、一句の<大浦>と五句二字目<比>。<大浦>は、『西本願寺本』ほか諸本に「大乃浦」とあるが、『類聚古集』『古葉略類聚鈔』に「大浦」とあるのを採る。五句二字目は、『西本願寺本』他に「此」とあるが、『古葉略類聚鈔』『温故堂本』『京都大学本』に「比」とあるのを採る。
 原文は次の通り。

  <大浦>之 其長濱尓 
  縁流浪 寛公乎