ブラックな俳句

 宮部みゆきの「ぼんぼん彩句」を読了した。著者は直木賞作家で、ミステリー、時代劇、ファンタジー等、レパートリーの広い作家である。本書は、十二句の俳句をモティーフとし、少しビターな内容の短編小説に仕上げた作品を収録した短編集である。
 「枯れ向日葵呼んで振り向く奴がいる」:アツコが寿退社をした直後、婚約者から婚約破棄を通告される。浮気をしていた彼は、その相手を妊娠させていた。失意のアツコは経路図も見ず、あてどなく路線バスに乗る。やがて乗客が減って行き、終点に到着するとそこには小さな丘と公園があり、公園内の熱帯植物園には無数の枯れた向日葵が立っていた。