遺された俳句の意味するもの

 貴志祐介の「梅雨物語」を読了した。著者はホラー、ミステリー、SFをテリトリーとする作家であり、1996年に「ISOLA」でに日本ホラー小説大賞第3回長編賞佳作を受賞し、同作を改題した「十三番目の人格ISOLA」で、作家デビューしている。本書は、ノンジャンルのホラーの中編集である。
 「皐月闇」:梅雨の日の夕方、作田慮男の家を若い女性が訪れる。還暦を過ぎた作田は認知症を発病しているが、その女性が萩原菜央であることをすぐに思い出す。作田は元中学教師で、教師時代には俳句部の顧問を務める俳人であったが、菜央はその頃の俳句部員であり、彼女の双子の兄の龍太郎も同