連載:シニア

「雨の日曜日」

あっ、またあった。何だ、咲いていたのか。

娘の住まいでキンモクセイが咲いているのに気付き、随分早いと思ったが、私が気付かなかっただけで私の住む街にも咲いていたのだ。

私は孫が「いい匂いがする」と言った時、ちょっとしたショックを受けていた。嗅覚も年老いるのか、と。

確かに嗅覚も衰えるだろうが、今回は私に全く余裕がなかったからだ。あの時に似ている。

癌が見つかった夏、蝉の鳴き声に全く気付かなかった。

雨の日曜日だった。私が最初に起きた。孫二人の朝食を用意していると、二人が一緒に起きてきた。珍しい。

ちょうど食べ始めようとす